著作者:macrovector/出典:Freepik

アプローチしたいのはどんなユーザー?成長を見える化すると戦略が立てやすい

2023.01.21

サービスやプロダクト開発では利用してもらうターゲットを定めることが重要です。

それも、年齢、職業、居住地といった人口統計学的な要素と合わせて好み、価値観、ライフスタイルといった心理学的要素も具体的に定義できるとその人物像に最適な認知施策やアイデア訴求ができると言われています。

いわゆるペルソナデザイン、ペルソナマーケティング、N1分析と呼ばれるものですね。

サービスを構築する機能や認知を促す広告は、それを受け取るユーザーに向けたギフトのようなものです。喜ばれるギフトを送るためには相手のことを良く知らなければいけません。

でも、サービス開発の現場ではいきなり特定の誰かを想定することは難しいことが多いです。そんな時はまず、サービス特有の指標を使ってユーザーを分類すると考えやすくなります。

この一文だと何を言っているのか分かりずらいので、noteを例に順を追って説明していきます。

最初に理想的なユーザーを定義する

まず始めにサービスのロイヤル顧客を定義します。

ロイヤル顧客とは一般的に「売上貢献が高いことに加えて、企業やブランドに信頼を寄せてくれている顧客」のことを指します。

noteの場合は「記事数」と「フォロワー数」がサービス特有の指標と設定でき、ロイヤル顧客はこの2つが両方とも多いユーザーと定義することができます。

継続的に記事を投稿し、かつフォロワー数が多いということは良質なコンテンツを提供しており、離反する可能性も低いユーザーです。サービス運営者にとっては絶対に手放したくない最高のユーザーがロイヤル顧客です。

ロイヤル顧客を定義できると「記事数」と「フォロワー数」を軸にユーザーを以下のように分類することができます。

ユーザーセグメントの例

ユーザーセグメントの例

このように分類すると各セグメントのユーザーに対して以下のような仮説を立てることができます。


セグメント1:記事数とフォロワー数の両方が少ない

→noteで記事の投稿を始めたばかりか最初の段階で投稿をやめてしまったユーザー

セグメント2:記事数が多くフォロワー数が少ない

→記事を投稿するスキルやモチベーションはあるが投稿内容に改善の余地があり集客のサポートが必要なユーザー

セグメント3:記事数が少なくフォロワー数が多い

→記事の内容がコンテンツとして良質。また、投稿者が別媒体で既に認知されている可能性が高いユーザー

セグメント4:記事数とフォロワー数の両方が多い

→ロイヤル顧客

ユーザーはサービスの中で成長していく

ここまで整理できると、どのセグメントに対してどんな施策を立てるか、あるいはどんな調査が必要かが見えてきます

基本的に全てのユーザーがセグメント4(ロイヤル顧客)に成長してくれることが理想です。

ユーザーはサービスをうまく活用できると以下のようにセグメントを移動していきます。

セグメントの移動経路の例

セグメントの移動経路の例

・S1→S2→S4:記事が増えたのちにフォロワーが増える

・S1→S3→S4:フォロワーが増えたのちに記事が増える

・S1→S4:記事とフォロワーが同程度のスピードで増える


実際にどのような経路を辿るのかを調査し、そのきっかけや要因を知ることができれば、各セグメントのユーザーに最適な機能や施策提供できます

例えば、S1のユーザーには記事を多く投稿できるサポートやモチベーションを維持できる施策が必要です。noteでは連続投稿を達成したらメッセージが送られてきたり、バッジゲットできたりします。

S2のユーザーにはどのような記事が見られているかスキされているかがわかるダッシュボードの機能が最適なアイデアの1つとして考えられます。

これはあくまでも一例ですが、サービス特有の指標を使ってセグメントに分けることでユーザーの成長に合わせて行うべき調査やアイデアの方向性を検討することができるのです

土俵にいない見込み顧客を加味する

ここまでの説明では分かりやすくするために、noteの「ユーザー」のみをセグメントで分類しました。実際はユーザー以外の「見込み顧客」と言われる人達も含めてセグメント化しておくことが重要です。

サービス特有の指標で分類できるエリアを「土俵」と捉えると、土俵外にはたくさんの「見込み顧客」が存在します。サービスが大きく成長していくためには見込み顧客をどのように土俵に上がらせるかが重要なテーマになります。見込み顧客は以下の3種類が存在します。


・会員:会員登録しているが記事を投稿していない人

・認知・未会員:noteを知っているが会員登録していない人

・未認知:noteを知らない人


ユーザーと見込み顧客を合わせると全体像は以下のようになります。

見込み顧客を含めたユーザーセグメント

見込み顧客を含めたユーザーセグメント

見込み顧客は未認知→認知・未会員→会員と遷移していきます。土俵に上がってもらうためには彼らの状況に合わせたアプローチが必要です。

S1〜4に対する施策と最も異なる点は、広告やプロモーションがメインになることです。見込み顧客はサービスとの接点が少ない分、他の媒体を通してアプローチするコミュニケーションアイデアが重要だからです。

指標を変えると捉えるユーザーが変わる

今回は、noteのユーザーを投稿することを前提にセグメント化しましたが、noteの場合は記事を閲覧する側のユーザー視点で「記事の閲覧頻度」「スキした回数」「購入した回数」などでも分類することができます。そうすると、投稿するユーザーとは別のアイデアや施策が必要であることが見えてきます。

また、これまで説明してきたユーザーの分類方法は、他の多くのサービスやプロダクトにも適用できます。以下に指標の例を挙げておきます。


・メルカリ:出品数、出品価格、フォロワー数、お気に入りされた数など

・uber eats:注文頻度、注文価格、注文カテゴリー数など

・airbnb:宿泊頻度、宿泊代、宿泊日数、宿泊エリア数など


どんなユーザーにどんなアプローチをすべきか、整理が難しいと感じた時はこれまでお伝えした考え方をヒントにユーザーを分類して見える化してみましょう。ご自身が担当しているサービスにも必ず活用できます。

こちらの記事(ユーザー調査を始める大前提 -調査設計をうまくやるコツ-)も合わせて参考にして頂くと、より具体的なアクションを検討しやすくなるのでおすすめです。

今後もサービス開発や分析に役立つ情報をお伝えしていきます。

村上通子

株式会社toya代表取締役。課題解決の研修講師。デジタルサービスの支援プロジェクト数は100以上に及び、業界問わず本当に必要な課題解決ができる人材育成を推進中。2019年グッドデザイン賞受賞。