チームでプロジェクトを進める時の心構え

2023.08.02

会社員時代にプロジェクトマネージャーとして活動していた時、チームメンバー間の目線合わせができていないことで、たくさんの苦労をしてきました。

みなさんも誰かと組んで仕事をする時に、気をつけていることがあるのではないでしょうか?

私が意識している考え方は、アウトプット(Output)とアウトカム(Outcome)を区別してメンバー間で共有することです。


2つの違いを簡単に説明すると、

●アウトプット:個々が作った成果物、出した結果

●アウトカム:結果として生じる状態、対象(社会や人)に起きた変化

アウトプットはあくまで手段であり、目指していることはアウトカムになります。


この考え方を理解するためによくあげられる例として、発展途上国に井戸を設置するプロジェクトがあります。


発展途上国のある地域では、生活に必要な水を手にいれるために、毎日、子供達が何時間もかけて水を汲みに行かなければならない状況があります。

水を汲みに行く労働のために学校に通えないので、文字を学ぶことができず、結果として十分な収入を得るための職につけないという課題を抱えています。こういった地域は貧困層が増加しつづけています。

このような地域において、家の近くに井戸を設置すると遠くまで水を汲みに行かなくていいので、前述した課題を解決することにつながります。


ここでポイントになるのが、あくまでも井戸は1つの手段(アウトプット)であるということです。

大規模な工事ができないのであれば、軽トラックを用意して一度に水を運ぶ仕組みをつくることも1つの手段ですし、リソースが豊富にあれば、ウォータークーラーや水道を設置することがより良い解決策になります。


このプロジェクトでは、限られたリソースと条件によって「井戸を作る」という手段を選んだ、ということになります。


このように、プロジェクトをスタートする時にはプロジェクトの目的となぜこの手段を選んだのかをチームで共有し、目線を合わせておくことが重要です。


これをサービス開発に置き変えると「サービス」は1つのアウトプットであり、サービスを作るための「機能を作ること」「デザインを作成すること」も全て個々のアウトプットになります。


言葉にすると当たり前なのですが、目線合わせをせずにいざプロジェクトをスタートしてみると、徐々に「機能を作ること」「デザインを作ること」が目的であると錯覚し、本来のアウトカムを達成するための最善の選択ができない状況に陥ります。


例えば、進めていくうちに「機能を作り込む」より「機能を減らしてサービスをしぼる」ことがアウトカムへの最短距離であることが分かっても、それを受け入れられなかったり、発想の転換ができなかったりします。


ただこうは言っても、チームで役割を分担して個々のタスクを決めると、それぞれがタスクに集中して取り組むため、アウトプットを目的化してしまうのもよくわかります。

そんな時は何度でも、最終的な目的であるアウトカムについてチーム内で話すことが大切です。


何のために今のタスクをしているのか、なぜこのアウトプットが必要なのか、メンバー全員が目的(アウトカム)を常に忘れずに進められたプロジェクトは成果が高いだけでなく、ブラッシュアップのスピードが大きなものになります。


アドバイザーとして外部から関わるときも、アウトカムの目線合わせを特に丁寧に行なっています。

この考え方はどんな仕事にも通じる重要な概念なので、これからも大切にしていきたいと思っています。

村上通子

株式会社toya代表取締役。課題解決の研修講師。デジタルサービスの支援プロジェクト数は100以上に及び、業界問わず本当に必要な課題解決ができる人材育成を推進中。2019年グッドデザイン賞受賞。