著作者:jigsawstocker 出典:Freepik

サービスを良くするために必要なたった1つのこと

2023.07.18

先日、知り合いの紹介で大手企業の新規事業担当者から相談依頼がありました。

最終的な結論として、WebサービスのUX改善に注力したいがその効果(ROI)を数値的なデータで知りたいとのことでした。


最近は少なくなってきましたが、UX改善を行うにあたって数値的なデータを求められることが時々あります。

特に大手企業が多いです。


わかりやすい例でいうと、Airbnbが2014年に施設検索や予約のUX改善に注力した結果、施設予約数が30%アップしたという事例があります。

取り組みは継続的に行われ、2023年現在、その効果は当時の何十倍にもなっています。

これは、公開されているデータとしてわかりやすいので紹介することがありますが、はっきりいってあまり当てになりません。


なぜなら、企業規模、社員のスキル、UXデザインへの理解度、マーケティング施策など、サービスを構成する要素は多くあります。

Airbnbと同じ体制で取り組むことなどできないからです。


ただ1つの真実は、Airbnbは2014年以前に自社のサービス品質に問題があることを認識し、それを改善して利用者にとって使いやすいサービスに生まれ変わろうと決めたことです。

UX改善に投資してどれだけの効果が生み出せるか確信は持っていませんでした。


サービスを良くするために必要なたった1つのことはこの決断です。


もちろん、具体的な目標やKPIを持つことは極めて重要です。

数値目標はチームの認識合わせに必要ですし、過去の実績と比べることができ、士気を上げることにも貢献します。


ただ、この目標は自分たちで決めるしかありません。

他社の結果や数値目標を自社に転用などできないからです。


サービスの顧客満足とリピート利用においてUXデザインは無視することはできず、今やUXに考慮しないサービスは生き残ることができない時代です。


このことに最初から気づいているスタートアップをはじめとした事業会社は、自社の開発チームでUX改善に取り組み、日々試作と検証を繰り返しています。


一方、取り組む根拠がほしくて意味のない数値データを追い求める大企業。

(それで取り組んだとしても社員それぞれが自分ごと化できるのか・・)


これではサービスの二極化が進むのも当然だなと改めて実感したのと同時に、なんとも虚しい気持ちにもなりました。


もちろん、すべての大企業がそうであるとは言いません。

私の知人にも自社の中で地道な取り組みをしている人がいます。


いずれにせよ、自分ができることは「自社のサービスを良くしたい」「成長したい」と思う組織を全力でサポートするだけだと、事業方針により確信を持つことができました。

村上通子

株式会社toya代表取締役。課題解決の研修講師。デジタルサービスの支援プロジェクト数は100以上に及び、業界問わず本当に必要な課題解決ができる人材育成を推進中。2019年グッドデザイン賞受賞。