誰でもデザイン活動をしている

2023.11.10

サービス開発のご支援をしていると、時々MTGの中で

「デザインのセンスがないのでどうやって作れば良いのかわからない」といった声が上がります。

こういう時って「デザイン」をいわゆる見た目のビジュアルデザインで捉えていることが多いのですが、本来「デザイン」とは「設計、構築」という意味が正しく「順序立てて制作していく」という意味が含まれます。


この議論は日本でも20年以上前からされてきており、デザイナーと名乗る人のジレンマでもあります。どうしても「デザイン」と伝えると外見的な装飾のイメージが強いですからね。


海外に目を向けると、1969年に政治学者で認知心理学者の第一人者であるハーバート・サイモンが自身の著書「システムの科学」で以下のように述べています。


「現在の状態をより好ましいものに変えるべく

 行為の道筋を考案するものは、誰でもデザイン活動をしている。」


まさにこれなんですよね。

私はこれを

「社会にとって何らかの価値あるものを生み出すためのプロセスを実行している人は、皆デザイン活動を行なっている」

と捉えています。

より好ましいもの、価値あるものを生み出そうとすると、より好ましくするためには何を解決すべきか?人々が困っている課題は何か?に向き合うことになります。


デザインとはまさにこの向き合う行為なんです。

そう捉えると、社会活動を行なっているほとんどの人が当てはまります。

なので、デザインの行為とは外見的な装飾を作れるかどうかではななく、「課題」を見極め、解決するプロセスを考えられるということが正しい認識です。


今やローコード、ノーコードで作れるシステムやアプリが増え、ビジュアル的な素材もAIがどんどん生成できる領域に達してきています。

いずれは最終的なアウトプットを人間が作らなくても、簡単に選択して生産できる時代が来ます。


ただ、本質的に大切なことである「課題は何か」「何をどのように解決するか」を思考するプロセスは、少なくともしばらくは人間が行わなければなりません。

これこそがデザインの本質であり、サービスやモノを生み出す人間が求められる能力です。


何が課題でどのように解決するのか、この事象に向き合っている皆さんは日々デザイン活動を行なっていると思っています。

村上通子

株式会社toya代表取締役。課題解決の研修講師。デジタルサービスの支援プロジェクト数は100以上に及び、業界問わず本当に必要な課題解決ができる人材育成を推進中。2019年グッドデザイン賞受賞。