アイデアを生み出す「問い」の話 - 思考の枠組みの作り方 -

2023.04.03

みなさんは普段どのようにアイデアを考えていますか?自分の頭の中のプロセスをきちんと言語化できる人は少ないのではないでしょうか。

アイデアを生み出すためには「問い」を立てることが重要と言われています。著名人たちも多くの「問い」に関する言葉を残していますね。


ピータードラッカー:

「正しい答えではなく、正しい問いが必要である」


アインシュタイン:

「1時間の時間を与えられたとしたら、59分を問題の定義(問い)に使い、1分を解決策の策定に使うだろう」


問いの考え方は15年ほど前にIDEOがフレームワーク化したことで、世界中のデザインファームや教育機関に広まりました。今回はスタンフォード大学のd.schoolで公開されている事例をご紹介します。

問い立ての考え方

あなたがアイスクリームの商品開発を任されたとします。今より良い商品を考えるために、市場調査を行いました。

すると、以下の写真のような重大な問題があることがわかりました。

【重大な問題】

「アイスクリームが溶けて、地面にボタボタ落としてしまう」

そこで、この問題を解決するための「問い」を立てます。

「問い」は英語で表記すると「How might we」であり、直訳すると「我々はどうすれば〇〇できるだろうか」になります。

この形式に当てはめて考えてみましょう。候補を3つ挙げます。

デザインにおけるHow Might Weとは何か:具体例とその効果

この3つの中でどれが最も適切な「問い」だと思いますか?

答えを言ってしまうと2になります。

1はアイデアを考える範囲が「コーンを作ることができるか」という部分に焦点が絞られています。「コーンを作ること」に限定しなくても問題を解決するアイデアは他にも考えられますよね。

3は注目した問題「アイスクリームを地面にボタボタ落としてしまう」に対して、壮大な内容になっています。解決したいことに対して考える幅が広すぎて、アイデアが分散しすぎてしまいます。

このように問いの立て方によって、思考の広がりやアイデアの方向性が異なることがわかります。


問いは他にも様々な視点で立てることができます。

デザインにおけるHow Might Weとは何か:具体例とその効果

視点を変えた問いを立てることで、同じ問題に対して出てくるアイデアが全く違ったものになります。アインシュタインが問いを作ることに多くの労力をかけたのも頷けますね。

アイスクリームの例では、適切な例は2とお伝えしましたが、実際は最適な問いを決めるのは自分自身です。

アイデアを考える幅が狭すぎず、広すぎない問いを見つけられると、それが土台となって多くのアイデアの種が生まれます。

解決策を考える前の思考の土台づくりが大事

人は通常、問題を見つけるとすぐに解決策を考えようとしてしまいます。

何か問題を解決したいと思ったとき、いきなり解決策を考えるのではなく、アイデアの方向性となる「問い」を定義することが良質なアイデア出しの第一歩になります。

なかなかアイデアが出ない場面でも、改めて問いを立て直すことで発想の糸口が見えることも多々あります。そして、問いは1つに絞る必要もありません。いくつかの問いからアイデアを考え、選択したり組み合わせていくことでさらに拡張して考えていくことができるのです。


問いを活用して、アイデアを考えるプロセスをブラッシュアップしてみることをおすすめします。

村上通子

株式会社toya代表取締役。課題解決の研修講師。デジタルサービスの支援プロジェクト数は100以上に及び、業界問わず本当に必要な課題解決ができる人材育成を推進中。2019年グッドデザイン賞受賞。